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2002年新年号

2002年の冬

 「あぁ、まったく寒いのだけは何時まで経っても馴れませんなぁ。」と言う私の季節の御挨拶に、
 「そりゃあ、歳のせいだよ。」
と、現実的で辛辣(しんらつ)な反応が返って来るようになった。冗談のつもりで言っているのであろうが(と言うのも、そういう事を言うのは決まって年上の人なのだから…)、時々自分が十代から二十代前半の頃の、体力的に最も充実した時期の事を懐かしく思い出すようになってしまっているのに気が付いた。あらあら、こうなってくると人生下り坂、まさしく坂道を転げ落ちて行くように衰えてゆくんだろうなぁ、などという物悲しくも寂しい気持ちになって、死ぬまでに何かをしなければいけないんじゃないか、などという強迫観念に胃袋をギリギリとしぼられながら過ごす時間が多くなってきた。以前ならそういう時は自然と飲む酒の量が増加する傾向にあったのだが、最近では翌日の事を心配してしまい、ついつい深酒するのを敬遠してしまっている。つまり弱くなったのだ。どうやらこの下り坂は、後戻りは出来ない先細りの一方通行らしい。しかし、人生は短い。そうそう何時までも考え込んではいられない。細かいことは気にしないちゃらんぽらんな性格が幸いする事も、たまにはあるようだ。

 「べつに年とってもいいじゃねーか!」
 ところで寒いと言えば、どうやら今年も暖冬のようで、スキー場のコンディションも今一つよろしくない。1月に雨が降るなどというような、おったまげる現象が起きている。おかげで道路はツルツルのアイススケート場に早変わり。バランス感覚に自信のある人でも、日に一度は「おっとっと!」を経験したであろう。これは「シヌーク」と呼ばれる暖気が、太平洋側からロッキー山脈を越えて吹き込んでくるために起こる。今年は更に「エルニーニョ」がその後押しをしているらしいのだ。もともとカナダの太平洋岸は黒潮と呼ばれる暖流の通り道なので、緯度のわりには比較的暖かい。そこで暖められた空気が季節風などの影響で内陸部にまで届くほど強く吹き込んで来て、おかげでこのような暖かい日々が訪れる。更にエルニーニョ現象により南米のペルー沖の海面水温が上昇し、貿易風などに影響を与えると、世界中で異常気象が引き起こされる。おかげで近頃この辺りは小春日和のような陽気にみまわれ、解けた雪と雨が夜になると凍り付き、今のような状況になったのだ。そして太平洋側の都市ビクトリアでは、なんと桜が狂い咲きしているのである。と言った訳だが、エルニーニョの事を少々説明した方が解かり易いだろう。

 太平洋の赤道付近は強烈な太陽の熱を受けて海面の水温が高い。そしてそこには何時も、東から西へ貿易風という風が吹いている。この風が、せっかく丁度良い具合に温められた海水を西へと運んでいってしまうのである。海面近くの水が持って行かれてしまうと、ピンチヒッターを任された海底からの冷たい水が湧き上がってきて、なんとか穴埋めをする。普段はこのバランスが上手くとれているから世の中平和なのだ。しかし風が強かったり弱かったりすると、温められた海面近くの水は普段と違う動きをする。おかげで海底から湧き上がる冷たい水の動きも変わる。更にその影響を受けた西側の海面水温も変わるため、そこで発生する雷雲にも異変が起き、それが更に貿易風に影響してバランスの悪い悪循環に陥ってしまう。風が弱い時に起こる状態を「エルニーニョ」(スペイン語で神の子と言う意)と言い、暖かい水が西へ持っていかれ難いので、ペルー沖などの東太平洋は水温が上がる。逆に風が強い時の状態を「ラニーニャ」(スペイン語で女の子の意)と言うのだそうだ。

 どうやら去年と同じく雪不足になりそうな気配に、ボーダーやスキーヤー、更にそれを食い物にしている輩は、一様に肩を落し気味である。しかし、去年の夏を思い出して欲しい。雪不足のおかげで湖や川の水位が例年より低く、魚釣にはもってこいの情況であった事を。悪い事があれば良い事もあるのだ。ポジティブに考えましょうよ。皆さん。
小池健一朗



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