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旅へのいざない
〜ベニスの春〜
「ゴンドラに乗らないか?」 滝元隆伸
リアルト橋を渡ると、ゴンドリエーレ(ゴンドラの漕ぎ手)がさかんにぼくに声をかけてくる。
「ひとりで乗ったって仕方ないだろ」とぼくは答える。
床屋のネオンサインのようなカラフルな船杭、チーズとトマトの焦げる香り、カフェのテーブルは落っこちそうなくらいグラン・カナル(大運河)に迫り出している。そこには学生時代に初めて見たのとなんら変わらぬ「水の都」があった。
歩き疲れたぼくは、一軒の古びたカフェのテラスに座り、カプチーノを注文する。テーブルの上の花の香りと運河の水臭さとが同時に鼻をつく。
「この店は建ってどれくらいになるの?」
忙しく行き来するウェイターをつかまえて尋ねる。
「Since the 14th century!」
と、こともなげに答えが返ってくる。ここでは外壁はもちろんのこと、トイレを改修するにも市の許可がいるのだ。老朽のためところどころレンガが剥き出しになった壁、ヴァポレット(水上バス)のけたたましいエンジン音、人目もはばからずにいちゃつく恋人達、けだるそうに階段に寝転がるバックパッカーの群れ・・・。人も景色もここではすべてが止まったままだ。
「変わらない分だけ新しい・・・」
かつてそんなウィスキーCMのコピーがあったが、イタリアを訪れるといつも感じること、それは「変わらぬこと」の物凄さであり、重みである。そして、変わらなかったこと、または変われなかったことが、皮肉にもいまこの国に経済効果をもたらしている。いくら変えてもいっこうに不況を脱し切れない国、もがけばもがくほど深みにはまっている国に、いまぼくたちは生きている。そのことが外から見るとよくわかる。唯一、ここが去年までと違うのは、"PACE(平和を)"と書かれた虹色の反戦旗があちこちの家々に掲げられていること。
「ゴンドラに乗らないか?」
カフェを出て歩きはじめたぼくに違う男がまた声をかけてくる。
「ひとりで乗ったって仕方ないだろ」
と、ぼくもまた答える。
ベニスの水位はここ100年で70cmほど上昇した。当然のごとく永続しそうなこの町にも、ひたひたと寿命は迫っている。こんな穏やかな春の日も永遠ではない・・・。そう思うと、石畳みを踏み締めるこの一歩一歩がいとおしく感じられる。
旬の映画紹介
毎年5月にフランスで開催される世界の国際映画祭の最高峰、カンヌ国際映画祭。映画祭と言えば、一般的にはアメリカのアカデミー賞に最も注目が集まりますが、カンヌはどちらかと言うともう少し芸術よりな感じで、好きな人は好き、嫌いな人は嫌い、と言うハッキリとした個性のある作品が多いです。
と言う事で、今回はここカナダのビデオ・レンタル屋でもありそうであまりドギツクない、カンヌの過去の受賞作品をご紹介したいと思います。
2001年の『The Son’s Room(息子の部屋)』は、突然の息子の死に向き合う家族を捉えたイタリア映画。こう書くと「泣ける映画」と思われがちですが、この作品は安易な感傷に流れる事なく、家族の再生に焦点が置かれているのがアメリカ映画と大きく違う所。どちらかと言うと、ジワジワと感動が迫ってくるタイプの作品ですね。
1988年の『A Short Film About Killing(殺人に関する短いフィルム)』は、ポーランドの巨匠Krzysztof Kieslowskiの短編。殺人を犯したある青年が死刑を執行されるまでを描いた内容で、「あなたはなにものをも殺してはならない」という十戒の一説がベースにされています。死刑制度について、人間の存在意義について改めて考えさせられます。
1969年の『Z』は、ギリシャのCosta-Gavras監督が亡命中にフランスで製作した作品。改革派の議員Z氏が軍によって暗殺され、その真相を追う判事とジャーナリストをリアリティ豊かに描いた内容で、政治サスペンスの傑作。ちなみにZとは「彼は生きている」という意味だそうで、アフガンやイラクでも流行るかも(笑)・・・。
Tomo Goda
http://www.tomonaho.net/
地球はこれから大丈夫?
ここ数年の間に、地球温暖化という言葉をよく聞くようになりましたが、地球が暖かくなることはどのような影響を私達や地球環境に与えるのでしょう?
地球には元々温室効果というものがあり、大気が地球を包む膜の役割をしてくれることで、私達人間を含む生物が快適に生活できる温度(地球全体の平均気温は15℃程)に保ってくれています。もしもこの効果がなければ、地球の平均気温はマイナス18℃になってしまい、とても生物が生きていくことのできない環境になってしまいます。
私たちにとって欠かせない温室効果ですが、この200年程で、石油や石炭などの化石燃料を燃やし続けてきたために、その膜に当たる温暖化(温室効果)ガスの濃度が上がってきてしまいました。人間に例えると、発汗機能が低下して外に体温を逃がすことが出来ないような状態になってしまっているんですね。そのために地球の気温がどんどん上がってしまって、最後には北極や南極の氷まで解かしてしまうという心配がされているのはみなさんご存知だと思いますが、気温の上昇がもたらす影響というのはこれだけではないのです。
平均気温が2℃上昇することで、マラリアやコレラ等の伝染病の繁殖する範囲が増えたり、バンフでは見られないゴキブリが発生してしまったり、日本ではおいしいお米が取れなくなるだけではなく、輸入に頼っている食糧が入って来なくなり、海流の乱れによる異常気象で砂漠が広がったり、洪水が多くなったりなど自分の身に危険が及ぶ状態になると予想されています。
この100年間で地球の平均気温は0.5℃程上昇したと言われていますが、そのペースは急激に上昇しています。IPCC(地球産業文化研究所)によると、今後100年間で6℃上昇すると予想されています。上で説明したような危険な状態に入る前に何とかしようということで、最近は様々な方面で温暖化対策について議論されるようになってきました。
1997年に日本の京都の国連会議で「日本をはじめ、カナダなど先進国が、具体的にいつまでどれくらい温暖化ガスの排出を減らしましょう」ということが決められました。そこで、2013年までに日本もカナダも1990年の排出量よりも6%低いところに目標を設定することになりました。
化石燃料に変わるエネルギーや、革新的な技術がない状態では非常に厳しい目標です。具体的な目標数値は、スケールが大きすぎてイメージしづらいのでここでは省略しますが、アルバータ環境省によると、アルバータ州が目標を達成するための費用に、年間55億ドル、日本円にして約4500億円という、とてつもない額が見積もられています。この費用をもし税金という形で私たちが負担することになると、どんなことになるでしょう?
アルバータ州の温暖化ガスのほとんどが石油、石炭に関わっており、そのうち40%強が火力発電所から排出されています。私たちが電気を使うのに伴って多量のガスを排出をしているわけです。アルバータ州で年間に供給されている電力約5万ギガワット。上の費用を全て電気料金に税金として上乗せされるとしたら、1キロワット当たり11¢になります。現在の電気料金が1キロワット6¢前後ですから、温暖化ガス削減の費用を私たちが負担すると、電気料金は約3倍に跳ね上がってしまいます。もちろん全ての費用を電気代に上乗せすることは考えられませんが、私達が普段生活するのに必要なものは、必ずと言っていい程どこかで石油などのエネルギーが関わって作られていますから、負担が増えることになるでしょう。
温暖化ガスは、現代社会には欠かせない化石燃料を使用することで排出されますが、普段の生活のなかで努力すれば、この排出量を減らす方法はたくさんあります。アルバータ州環境省は、昨年から大きな工場や発電所には、温暖化ガスの排出量の報告を義務付けることを決め、一般の人には、温暖化ガス排出を最低限に食い止める努力をするように求めています。
例えば、車を運転する人でしたら、車のタイヤの空気圧を常にバランスよく保つ、屋根上のキャリアは必要な時以外は取り外す、アイドリングを減らす、エンジンの回転数を上げすぎない運転など。家や会社では、ごみの仕分けをしっかりしてリサイクルできるものはする、夜間に必要ではない電源は切る、長く家を空ける時は電源プラグを抜いて出かける、白熱灯から蛍光管に変える、シャワーの水量を心持ち減らすなどどれも誰でもできる省エネルギーへの心がけばかりです。エネルギー節約の努力をするということは、地球温暖化防止への努力もしているということを心に置いて生活していきたいですね。Aki
Let's Talk Like Canadians!!
〜英会話ワンポイントアドバイス〜 What's the matter (with someone/ something)? = What's wrong?
(どうしたの?)
It doesn't matter. = It's not important.
(問題ない・たいしたことない)
What's the matter? / It doesn't matterは皆さんお聞きになられたことのあるフレーズだと思います。1つ目の“What's the matter”は、「どうしたの?」と物が壊れた時や何か問題がある時など相手にその状態をたずねるのに使います。
二つ目の“It doesn't matter.”は、「問題ない」「たいしたことではない」など相手の言ったことに対して返事をするのに使います。
これらのフレーズがまだ分からない方は、現地のネイティブスピーカーに聞いてみてください。"What's the matter?”(どうしたの?)と聞かれるかもしれませんね。言葉を覚えるのは実践あるのみです。是非、このフレーズの使い方を実践で覚えてみてください。
<What's the matter?>
●Situation 1
Friend 1: What is the matter? You don't look well.
Friend 2: I have a headache today.
Friend 1: You should go home and get some rest.
●Situation 2
Customer: Hello, I have a problem with my car.
Mechanic: What's the matter?
Customer: I'm not sure, it's making a lot of noise lately.
Mechanic: Well, I'll take a look at it for you.
<It doesn't matter.>
●Situation 1
Employee: I am sorry I am late for the meeting.
Boss: It doesn't matter. You didn't miss anything.
●Situation 2
Friend 1: I'm sorry I didn't hear what you were saying. I was listening to the radio.
Friend 2: Why, what is the matter?
Friend 1: It doesn't matter, it wasn't important.
BY Jannine Rossi (Banff Education Centre講師)
星野道夫さんの犠牲に思うこと
カムチャッカ半島南端、クロノツキー自然保護区のクリルレイク周辺は、世界でも有数のグリズリー生息地。カロリーの高いベリー類やサーモンを筆頭に、自然の食糧には事欠かない。グリズリーにとっては楽園のような場所らしい。
もしもアラスカ中にクマが1頭もいなかったら、僕は安心して山を歩き回ることができる。何の心配もなく野営できる。でもそうなったら、アラスカは何てつまらないところになるだろう。
1996年8月8日、この土地で写真家・星野道夫氏はグリズリーに襲われ帰らぬ人となった。星野氏を捕食したグリズリーは、彼が愛した本物(野生)のそれではなかった。外見は野生のクマだが、内面には人間が学習させてしまった間違いを秘めていた。人馴れし、人間の食料や生ゴミに餌付いたグリズリーだったらしい。このクマは、人間が大きな声や音を発しようとも、また、ベアスプレーを吹きつけられようとも、多少無視すればそこにある食糧にありつけることを学習していた。彼にとって人間の食糧とは、わずかの労力で得られる格好のカロリー源であったのだろう。
こういった経験を持つクマが、必ずしも人間を襲うわけではないだろうが、過去の調査例からはその可能性が高いことも知られている。もともとこのクマは、ロシアのローカルテレビ局によって、意図的に餌を与えられていたという説もある。もしそれが事実ならば、星野氏はクマではなく、人間に襲われたという気がするのは自分だけだろうか。
人馴れしすぎたクマは、自分の間違った行動がいかに危険であるか知るすべがないまま、最悪の場合は射殺されてしまう。しかしながら、人間はすでに解明されている事故のパターンをもっとよく知っておくべきではないだろうか。ロッキーでの生活や遊び、これらの背景には常に生態系の頂点に立つクマ(グリズリー)が存在する。人間の何気ない行動は、積み重ねると急速に生態系の破壊を助長してしまう。この土地で暮らすからには、知識とマナーの向上を自らに課したい。人間やクマの安全、そして大好きなロッキーの永続のために。
人間は常に自然を飼い慣らし、支配しようとしてきた。けれども、クマが自由に歩き回るわずかに残った野生の地を訪れると、僕たちは本能的な恐怖をいまだに感じることができる。それは何と貴重な感覚だろう。これらの場所、これらのクマは何と貴重なものたちだろう。 (星野道夫)田中康一