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2004年4月下旬号

旅へのいざない  〜北へ〜 前編

 

 アラスカ最大の都市アンカレッジ(Anchorage)。ある夏の日、私は空港で日本から遊びに来る妹を待っていた。途中のスーパーで大量に食糧を買い込んでしまい、セーフウェイのビニール袋を手に3つ。地元のおばちゃんにしか見えない。案の定、空港では旅行客に道を聞かれるわ、ローカル話に同意を求められるわで面倒くさかった。

 ストライキの影響で6時間遅れ、振替便のビジネスクラスで到着した妹は、寝ぼけ眼と間抜け面で「何で姉ちゃんここにいるの」なんて言う。アラスカに着いたことをまだ理解していないようだ。当初の予定では、その日の朝便で北極海沿岸の町に飛ぶつもりだったが、断念せざるを得なかった。ダウンタウン行きの市バスに乗ると、知り合いのおっちゃんが運転手で会話が弾んだ。

 翌朝、「アラスカ鉄道」に乗る。発車30分前の電車の中で、前日買い込んだ食糧をホステルの冷蔵庫内に忘れてきたことに気づき、慌てて取りに走る。息を切らしながら駅に戻ると、発車のアナウンスが流れていた。危ない危ない。車内で待っていたのんきな妹は、「バカだねぇ。そんなリスク負わないでまた買えばいいじゃん」。まったく気楽なもんだ。通訳、アレンジ、金銭面において、すべて私に任せておいてその台詞。「じゃあ、金出せ」と言いたかった。

 1903年に設立されたこの路線、今は南部シーワード(Seward)とフェアバンクス(Fairbanks)間の466マイルを結ぶ。夏には大きな窓付きの車両が接続され、観光客でにぎわう(らしい)。私たちが乗ったのは普通車。昔の日本の特急車両といった感じだろうか。景色も十分見え、静かだ。一番よかったのは、各車両の出入り口の窓が開き風に吹かれることができたことだ。わざわざ高い金を払って観光車両に乗らずに正解だと思った。

 7時間かかって着いた目的地はデナリ(Denali)。ロッキー地帯と同じく世界的に有名な国立公園だ。6000エーカー以上にも及ぶ広大な公園に、道路は一本のみ。入園するには、案内所から出発するバスに乗るか自分で持ち込む自転車のみ。バックカントリーに行く際はもちろん届出が必要だ。翌日、早朝出発したバスでワンダー湖(Wonder Lake)を目指す。スクールバスと同じ仕様のシャトルバス。舗装されていない道路では、前座席の背もたれをつかんでいないと振り落とされそうだった。平均的日本人サイズの自分とそれより小さな妹が並んで座っても余裕があるとはいえない席に、大きく足が長い欧米人が並んで必死に並んで座っている姿を眺めるのは、なんだかおかしかった。

 途中の道は、私の乏しい形容詞では表せないほど壮大なものだった。氷河で削られたU字谷、そこを縦横無尽に流れる小川。対岸にそびえたつ山々。ツンドラの絨毯がその麓を埋め尽くす。そして、その恩恵を受け自由にたくましく生きる野生動物たち。ロッキーの自然もすばらしいけれど、私の説明じゃロッキーのものと同じように聞こえるかもしれないけれど、デナリにはまだ人間の手のつけられていない自然が広がっていた。それを大事に守るためなのだろうか。バスは砂埃で動物たちの邪魔をしないように、たかだか片道85マイルの距離を4時間もかけて走り続けた。

 ある場所でバスが止まった。常にご機嫌斜めで1ヶ月に数回しか見られないというマッキンリー山が見えるポイントらしい。到着した当初は、雲に隠れていた気難し屋さんも10分ほどすると、くっきりと見事な姿を現してくれた。遠目ではバンフのカスケード山のようにも見えるが、「植村直巳氏が遭難した山」なのだから、もっともっと険しく荒々しいのだろう。山の知識がないのであまりよくわかりません、ごめんなさい。


 ついに一般客が簡単に行ける最奥の湖に到着した。おなかがすいたので、持参したランチで腹八分目まで満たす。デザートはその辺にあるブルーベリーだ。ふかふかしたツンドラの上でグリズリーと鉢合わせにならないように注意をはらいながら、夢中でブルーベリーをほおばった。

 デナリから相乗りのバスに身を委ね、次はフェアバンクスへ向かった。私営のユースにお邪魔する。昼間に電話を入れベッドを2つ確保しておいたのだが、管理人は「どこでも好きなところに寝ていいよ」と言うのでベッドを探したが、ひとつも空きがない。「話が違うじゃないか」と言い寄ると、「ベッドは早い者勝ちだから、ソファでも床でも空いているところを勝手に探して寝ろ」と言う。寝袋持参の私は何とでもなるが、バックパック旅行初めての妹は、寝袋もなく困り果てている。見かねた男性が妹にベッドを譲ってくれた。ありがたい。私は知り合った自転車旅行者に事情を説明し、一人用のテントを貸してもらった。さっそく庭に張る。芝生の上で寝るのは久々だ。しかも市内とはいえアラスカである。「だから何?」って聞かれると困るのだが、なぜか気分が高まって眠る気にならない。ということで、酒を体内に入れる。星を眺め、いろんな想いを巡らせていると、あっという間に眠りに落ちてしまった。

 フェアバンクスを発つ朝。−3℃対応の寝袋じゃちょっと寒い9月になっていた。妹の帰国まで残り3日。どうしても北極海が見たい私たちは、高い金を払ってでも行こうと決断し、いろいろ検討した結果、アラスカ航空主催の1泊2日のツアーに申し込んだ。個人手配の航空券代と同じ値段で、飛行機・宿・市内観光が含まれるツアーはお徳感がある。時間がない人には便利だ。チェックインを済ませ、ワクワクする私たちを乗せた飛行機は離陸した。
(次号へ続く)

 

Mick


クマのため? 利益のため?


  キャンモア郊外にあるスリーシスターズキャンプ場。昨年9月、このキャンプ場に頻繁にクマが現れました。目的は冬眠前の食糧確保。結局、人間との接触を未然に防ぐため、キャンプ場は2週間の閉鎖を余儀なくされました。

  ここまでなら、何も特筆すべきことでもなし。クマの習性を優先するため、この時期はあちこちのキャンプ場でとられる措置です。驚くべき事実は、クマたちが狙った植物です。それは、狭い範囲に集中する Red Osier Dogwood(レッド・オーザー・ドッグウッド)の実。この土地の認識として、冬眠前の彼らがこの種類を食することはありませんでした。通常狙われるのは、「カナディアン・バッファローベリー」の実。カロリーが高いため、一心不乱でむさぼる姿はお馴染みの光景です。それが何を間違えたのか、「ドッグウッド」とは摩訶不思議!! これは専門家の常識をくつがえす出来事。がしかし、今後はこの現実を受け止め、まともな対応をしていかなければならないのです。

  クマは学習能力の非常に高い動物。今年もこのキャンプ場をエサ場とすることは確実です。ところが、キャンプ場には自然の食糧のみならず、人間の残した生ゴミや食糧も存在します。彼らが誤って味を占めれば、人間を恐れることもなく、最悪の場合は捕食のために人を襲うことさえあるのです。人馴れし、人間の食料や生ゴミに餌付いたクマは、こちらが大きな声や音を発しようとも、ベアスプレーを吹きつけられようとも、多少無視すればそこにある食料にありつけることを学習してしまいます。彼らにとって人間の食料は、わずかの労力で得られる格好のカロリー源となるのでしょう。

  このキャンプ場を管轄するカナナスキス・カントリー(以下、KC)では、クマと人間のために何らかの具体策を迫られました。最も簡単な方法はキャンプ場の閉鎖です。でも、それを実行したくないのが本音でしょう。理由はカンタン。収入が途絶えるからです。州立公園も国立公園も、利益の追求が必要。残念ながらそれも現実です。

  効果があるのは、「電気フェンス」の設置。バンフ国立公園のレイクルイーズキャンプ場では、昨年初めて導入されました。柵に弱電流を流し、クマにキャンプ場へ近寄るのは危険だと教えます。もちろん、この方法はキャンプ場を閉鎖することなく、フェンス内で人間を安全に遊ばせることが可能。当然、収入も継続されるのです。ただし、これには莫大な費用を要します。バンフやレイクルイーズのような利用客の多いキャンプ場ならまだしも、KCでは勇気のいる方法です。

  結局KCは、『ドッグウッドの間引き! 』を決定。早速4週間かけてすでに完了させちゃいました。なんとも安上がりな、そしてあまりにも一時的な愚策だと憤慨してしまいます。自分たちの利益のため、クマの食糧を減らしては何の解決にもなりません。「ドッグウッドは人間のいない他の場所にも豊富にあるのだから、そこへクマを誘導してあげている」というのがKCの言い分。では、他のキャンプ場やハイキングコースで同じことが起こっても、やっぱり間引きをするのでしょうか? これではクマが災難です。


   冬眠前にドッグウッドをむさぼることは、クマ本人にもなかった感覚です。でも、現実に彼らは食べたのです。それを食して冬眠に備えることを学んだはず。バッファローベリーだけを狙った、従来の行動に変化が生じたのです。そのことは、今後生まれてくる子供たちにも受け継がれることでしょう。どんな生物も、環境変化の中では生きるために新たな術を探すのです。でも、人間にそれを断ち切る権利などありませんでしょ。

田中康一
www.ilovewintergreen.com


<旬の話題>

  今、国道1号線沿いの湖 Lac Des Arcs にたくさんの白鳥が飛来してきているのをご存知ですか。ロッキーに春を告げる鳥、「Tundra Swan(アメリカコハクチョウ)」と「Trumpeter Swan(ナキハクチョウ)」が、今年は例年より早く3月下旬から続々到着しています。越冬地のモンタナやアイダホから繁殖地のアラスカへ向かう途中、Lac Des Arcs で繁殖のエネルギーを蓄えます。

  ナキハクチョウは世界最大の白鳥。カナダ国内では20世紀初めの乱獲が影響し、現在でもその数は限定されています。お隣のB.C.州ではバンクーバー近郊など越冬場所がいくつもありますが、アルバータ州では渡りの途中でしか確認することができません。時期も通常は4〜5月と限られています。日本では迷鳥として稀に北日本でも確認できるとか。

この期間限定の白鳥を、より近距離で楽しめる場所を紹介します。国道1号線をバンフからカルガリー方面に80km、「Sibbald Creek Trail」のジャンクションを降りて左折すると、小さなポンド(池)があります。白鳥はもちろんのこと、珍しいマスクラットに出会える可能性もあります。双眼鏡をお忘れなく。

記事・写真提供:田中康一


 

Let's Talk Like Canadians!!
〜英会話ワンポイントアドバイス〜


Kill Time 
= 時間をつぶす、暇つぶしをする、退屈を凌ぐ

この慣用句を耳にしたことがある人も多いと思いますが、直訳すると「時を殺す」。時間をもてあましている時に時間をつぶす意味を示します。〔例:待ち合わせやバス・飛行機を待っているなど〕
よく似ている表現でwaste timeがありますが、kill timeとは違い、時間を無駄に費やしている時に使います。(例:仕事中にEメールをするなど)

●Situation 1 

Bill: We're early. What should we do now?
Joe: We can kill time by playing cards.

●Situation 2
Anne: Oh no! The flight has been delayed.
Scott: Let's think of something to do to kill time.
Anne: What can we do?
Scott: Let's go look in the gift stores.

●Situation 3 

Tom: The bus won't be here for 2 more hours!
Jim: What can we do to kill time while we are waiting?
Tom: Let's go for a beer.
 

BY Susan Taylor (Banff Education Centre講師)


 

2004年4月15日更新

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