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2004年10月上旬号

旅へのいざない
〜ブリティッシュ・コロンビアの旅シリーズ
  Bバンクーバー・アイランド 海の旅 後編〜
 

  シーチャートにあるロッジのオーナーが教えてくれたボーイスカウトがいつもキャンプするという砂浜を探しに、だんだん日が暮れて行く海を漕ぎ進んだ。まだ辺りは明るかったが、くねくねとした海岸線といくつもの小さい島がこの捜索を困難にしていた。「あの角を曲がれば砂浜が見えるかもしれない」という希望は、そうするごとに消え失せて行った。

「蚊に食われて死んでしまう」
  しかしこの辺には停泊しているヨットがいくつかあり、人の気配があった。その上、岸に小さな家がひとつポツンと建っているのが見えた。何度か前を行き来していると、心配したのかこの家から女の人が出てきたのでその砂浜の場所を聞いてみた。するとその人はさほど遠くない海岸を指し、「あそこがそうだけど、あんな所では蚊に食われて死んでしまう」と言うのだった。湿地帯と隣接しており、蚊が大量発生するらしいのだ。その上、この付近にテントを張れるような砂浜はないと言う。
  がっかりだった。本来ならば、どこかの陸地から眺めていただろう夕日が空全体を赤く染めていた。漕ぐのを止め、プカプカ浮きながら思案した。適当な砂浜を探すのにこんなに苦労するとは思っていなかったのだ。私達に残された選択肢は、今までに見たでこぼこだがかろうじてテントを張れそうな場所へ戻るか、さほど遠くないもののひとつ海峡を越した先にあるハンド島のキャンプ場まで漕いで行くかだった。「後者が賢明では」と口にしようと思った時、連れが「もしかしてあれがハンド島のキャンプ場かな?」と遠方にちかちかする明りを指差した。
  シーチャートからは遠く思われたハンド島だったが、ボーイスカウトの砂浜を見つけるために海岸線を西に来ていたため、海峡を挟んだ真向かいがハンド島という思い掛けず近い位置まで来ていたのだった。地図上で見ても、30分ほどで着くであろう距離だ。行き先が決まらずどことなく宙ぶらりんな状態から抜け出せるとわかると、ハンド島行きはすぐに決定した。
  対岸にちかちかする明りを目指し、空が暗くなるのと競うように海峡をいそいだ。近づいてみると、この明りは小さな灯台だった。日没と共に午後9時半過ぎ、ジブラルタル島よりもはるかに多い人で賑わうハンド島にようやく上陸した。そんな遅い到着に興味を持った人々が話しかけてきたが、ズル賢い連れは、一日迷いっぱなしでこんな遅くに到着したということは話さずにその日の長いルートを説明していた。この波乱万丈な一日をよく無事に乗り越えられたものだと一人で感心しながら、星の下、もうテントへ退散した人が残した焚き火で体を温めた。

最後の朝の凪いだ海
  前日の夜誰かがラジオで聞いた天気が悪化するという情報は間違っていたようだ。翌朝、心地良く晴れた空が広がっていた。岩だらけのハンド島の海岸からカヤックを押し出し、素晴らしく穏やかな朝の海を再びシーチャートへ向かった。まるで湖の中を漕いでいるような凪いだ海だった。前日の夜、鯨の目撃情報を聞いたため、静かな水面を破り鯨が現れるところを想像したが、実際そんなことがカヤックのすぐ近くで起きたなら、感動するどころかひっくり返ってしまっただろう。
  シーチャートで4日振りのシャワーを浴び、荷物をバックパックに詰め替え、再び乗船したレディー・ローズの食堂でチーズバーガーを頬張った。これでブロークン・グループ・アイランズを後にするかと思うと名残惜しかったが、準備不足のむちゃくちゃな海の旅がやっと終わることにホッとした。奇妙な達成感があるのは、不安にさいなまれながらもなんとか自力で切り抜けてきたからだろうか。
  フェリーがユクレットに近づいた時、船長からアナウンスが入った。船の右側に鯨が泳いでいたのだ! 遠くをゆっくり動く岩のような巨大な背中は、浅い海を好むというグレー・ホエールのそれだった。平均体長約13メートル、日本名はコク鯨という。20世紀初頭に絶滅寸前まで乱獲された種類の鯨だが、1930年代には国際的に捕獲が禁止され、それ以降順調に個体数が回復してきた。現在では、絶滅危惧種のリストから外されるまでに至っている。そのお陰で、こうして見ることができたのだからありがたい。

ゆっくりユクレット
  レディー・ローズの終点ユクレットの港では、暑い夏の午後が待っていた。予定では通り過ぎるだけの町だったが、のんびりとしたこの田舎の漁村は、「サバイバル」なカヤックの旅の疲れをやさしく癒してくれそうだった。
  次の日の午後にはバンクーバーから帰りの飛行機に乗らなければならず、ここからバスでトフィーノへ行き、翌朝バンクーバーまで帰るのがもともとの予定だった。だが少し調べてみると、バンクーバーまでの予約を入れてあった「トフィーノ・バス」
1は、ユクレットでも乗車可能だった。その上、田舎町だからだろうか、ホステルとほとんど変わらない料金の安いホテルがあるという。移動に午後を費やすよりも、ここでゆっくりすることにお互い賛成した。
  通常カナダでホテルと名の付くところは、部屋や料金もそれなりだ。しかし、外に「ホテル」という看板が出ているのに「ユクレット・ロッジ」
2という名のこのホテルは、トイレ・シャワーなしだが小さな洗面台がついた清潔な個室が一晩一室$60だったのだ。
  重いバックパックから解放され、町を散策に出かけた。町外れにある「ワイルド・パシフィック・トレイル」
3からは、白く泡立つ波が黒々とした岸壁にぶつかっては引いていく、どこか日本の海岸線に似た風景が見えた。そういえばこの海を越した向こうには日本があるのだった。灯台まで行く部分のこのトレイルはとても気持ちの良いものなので、機会があればぜひ足を運んでみて欲しい。

家路へ
  8日間という短さだが、何と実だくさんの旅だったことか。翌日、満足感に満たされカルガリー行の飛行機に乗り込んだ。旅をするというのは、何かとても心が豊かになるものだ。バンフという多くの人の旅の目的地に住んでいながら、毎日の忙しさに揉まれ何か物足りない気持ちになっていたのかもしれない。こうした素晴らしい場所が無数にあるカナダという土地に住めることを幸運に感じると共に、この大自然が変わることなく後世に残されるよう、できる限りの協力をしたいと思う。(完結)

小林りん

1 Tofino Bus www.tofinobus.com
2 Ucluelet Lodge Hotel www.ucluelethotel.com
3 Wild Pacific Trail www.longbeachmaps.com/wildtrail.html

 

 


 

この季節にぴったりの映画紹介
〜秋色の景色と男のロマン〜

  深まりゆくロッキーの秋の美しさが独特の雰囲気をかもし出しています。季節の折々に決まって観たくなる映画というものがありますが、今この時期にぴったりの映画をここにご紹介させていただきましょう。
  『レジェンド・オブ・フォール(Legends of the Fall)』は1994年制作の米映画で監督は昨年の話題作『ラスト・サムライ』のエドワード・ズウイック監督です。主演はブラッド・ピットとこの映画をきっかけに人気が急上昇したジュリア・オーモンドです。
  物語の舞台は米国モンタナ州の牧場ですが、撮影はカナナスキス地区を中心としたカナダ西部で行われ、大自然の美しさが感動的に表現されています。1994年の第67回アカデミー賞では撮影賞が与えられたほどの出来映えで、秋の色、黄葉の景色や針葉樹の森の景色に親近感を覚えます。
  ストーリーも遥かなる大地に息づく男たちのロマンと美しいひとりの女性をめぐった恋愛、家族愛、先住民問題などが上手く織り込まれており、初めから最後まで楽しめるでしょう。特に最後の場面は何度観ても感動します。また、個人的感想として、この映画を観るたびに、ブラット・ピットの出演作品の中でもこの映画が一番、彼を素敵に見せていると感じます。冒頭の場面はスタッブという名の年老いた先住民の語りから始まりますが、映画に登場する先住民はこのあたりでもよく話題にあがるストーニー族の人々です。


Chiaki


Let's Talk Like Canadians!!
〜英会話ワンポイントアドバイス〜


Be glued to the TV = テレビにくぎ付けになる


テレビにくぎ付けになっている状態のことを英語では「のり(Glue)でぴったりとくっついている」と表現します。おもしろい番組を夢中で見ている時、周りからの声は一切耳に入ってこないということが多々ありませんか?

●Situation 1 
Dave: Billy, dinner is ready!
Barb: He doesn't seem to hear you.
Dave: I know. He is glued to the TV. Listen, he won't hear this; Billy, the house is on fire!! ...... See, he still didn't hear me.

●Situation 2
Marie: Thanks for inviting me for dinner this evening, Sherry. 
Sherry: No problem. I could use some company tonight anyway. 
Marie: Really? Where's John tonight?
Sherry: Oh, he's here at home. He's in the basement and he's glued to the TV. His favorite baseball team is playing tonight.

●Situation 3
Larry: Don't call Bob on Thursday nights. He won't answer the phone.
Joe: Why not?
Larry: He's glued to the TV every Thursday night because his favorite show is on. He loves watching Donald Trump on "The Apprentice". 
 

BY Susan Taylor (Banff Education Centre講師)


 

●冬のスキー情報コラム、モモちゃんの「スキー場へ行こう!」が今年も始まりました。(今号はお休みです。)

 

2004年10月7日更新

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